『医師の説明は基本的に理解できていないはず』
症状や原因の説明について
一宮市の鍼灸院、青葦(あおい)治療院です。
当院では、患者さんに症状の原因や身体の状態をご説明する際、「事細かにすべてを説明すること」はあえて行わないようにしています。
冷たいように聞こえるかもしれませんが、それには明確な理由があります。
それは、どこまで時間をかけても、患者さんがこちらの説明を「完全に理解しきることはない」からです。
誤解のないように念を押しておきますが、これは決して患者さんの能力や理解力が低いと考えているわけではありません。
根本的な原因は別のところにあります。
埋めることのできない「圧倒的な時間の差」
医師はもちろん、私たち鍼灸師やセラピストも、これまでに何千時間、何万時間という膨大な労力を費やして、人の身体について学び、臨床で考察を繰り返してきました。
それだけの時間を費やして得た視点で人の身体を診ているため、そこから生み出される説明の前提には、どうしても専門的な背景が含まれてしまいます。
例えるなら、私たちが普段「日本語」を使ってコミュニケーションをとっているのに対し、医療や身体の専門的な説明は「外国語」で話しているようなものです。
なんとなくの雰囲気やニュアンスは伝わるかもしれませんが、その真意や細かい構造までを初見で理解できないのは、ごく普通のことなのです。
説明の「無限ループ」と、一度では覚えられない人間の性質
とはいえ、患者さんご自身の身体のことですから、最低限の納得をしていただく必要はどうしてもあります。
そこで、図を使ったり、例え話を用いたりして「簡易的な説明」をするわけですが、これもあくまで「患者さんがおおまかに理解できる程度のパッケージ」に過ぎません。
もし、これを正確に全て説明しようとするとどうなるでしょうか。
簡易的な説明に使った「専門用語」を説明するために別の専門用語が必要になり、さらにその用語を説明するために……と、文字数と時間が無限に膨れ上がってしまいます。
これではキリがありません。
また、さらなる問題として「そもそも教えられた知識を一度で理解・記憶できるのか?」という壁があります。
学生時代、私たちは定期テストのために必死に勉強をしました。
なぜテスト勉強が必要だったかといえば、「授業で一度聞いたくらいでは、覚えられないし理解できないから」です。
医師やセラピストからの説明も全く同じです。
一度の説明で身体の複雑な仕組みを完全に理解できることは、基本的にはありません。
「そういうものだ」という前提に立つ必要があります。
「もっと時間をかけて説明すべき」という理想が招く、良くない未来
ここで、「理解できないのなら、医師やセラピストはもっと時間をかけて、充実した説明をすべきだ」というご意見も出るでしょう。
理想を言えば、患者さん自身が自発的に身体について学び、我々も時間をかけて説明するのがベストかもしれません。
しかし、それは現実的には不可能です。
なぜなら、一人の患者さんに無制限に時間をかけていれば、医療機関や治療院は利益を上げられず、経営が成り立たなくなってしまうからです。
私たちにも生活があり、事業を存続させるための利益を度外視するという選択肢はあり得ません。
近年、若手医師が過酷な勤務医を避けてすぐに美容医療の道へ進む「直美(ちょくび)」という言葉が話題になっています。
これは、美容整形以外の一般的な医療が「割に合わない(儲からない・報われない)仕事」として評価されつつある現実を表しています。
このまま「医療者は自己犠牲を払って当然」という風潮が進めば、やがて「医師になりたい」と思う優秀な人材がいなくなってしまうでしょう。
薬の処方程度ならAIでも代替できるかもしれませんが、高度な判断や外科的な手術においては、より優秀な人材に医師になってもらうことこそが、最終的に「患者さんのため」になるはずです。
現実的な最適解としての「ほどほどの説明」
こうした様々な側面――専門知識の壁、人間の記憶の限界、そして医療というシステムの維持――を総合的に考えていくと、患者さんへの説明は「ほどほどにしておいたほうが良い」という結論に達します。
すべてを分かってもらおうとするのではなく、施術の目的と最低限の安心感をお伝えし、あとは実際の「身体の変化(結果)」で示していく。
あくまで私個人の意見ではありますが、それがこの業界において、双方が疲弊せずに前へ進むための、最も誠実で現実的な付き合い方ではないかと考えています。
ご予約はこちらから
▼LINE公式アカウントはこちら▼




